東京高等裁判所 昭和34年(ネ)3078号・昭34年(ネ)2935号 判決
次に一審被告詫摩スヱ、同松本和夫に対する請求について検討する。右一審被告等が司法書士津田藤兵衛から自称諸貫の偽造した印鑑証明書を示して保証書の作成を依頼され、右印鑑証明書を真実なものと信じ他に自称諸貫が真実の諸貫その人であるか否かの調査をしないで本件保証書を作成交付したことは、前示引用に係る原判決理由中に示すとおりである。そして原審証人津田藤兵衛の証言によれば、司法書士の間においては登記申請者の依頼があれば印鑑証明書を徴するだけで他の調査をなさず保証人となり保証書を作成交付することが一般に異とされていないように認められるけれども、元来不動産登記法第四十四条が登記義務者の権利に関する登記済証の滅失した場合に、登記申請書に登記義務者の人違のないことを保証した書面を添附すべきことを必要としているのは、登記義務者として登記申請をしている者と登記簿上の登記義務者とが実際に同一人であることを確保することにより不正な登記のなされることを防ぐためであるから、かような保証をなす者は、現に登記申請をしている登記義務者が登記簿上の登記義務者と実際に同一であることを確めて保証する必要がありその同一性を確知する方法として印鑑証明書を提出させることは便宜有効な手段とはいえるけれども、印鑑証明書も本件のように偽造の場合があり、印鑑証明書だけで登記義務者の同一性を認識することは不確実たるを免れず、たとえ多くの場合にこの方法だけで過誤を生じないとしても、もし過誤を生じたときは、かような方法だけで保証をした者は善良な管理者の注意を怠つたものとして、これにより通常生ずべき損害はもとより特別の事情により生じた損害もまたこれを予見し又は予見し得べかりし限りすべて賠償の責に任じなければならない。
(川喜多 小沢 賀集)